失くしものをしたときは、不安になります。
失くしたものに、それまで感じていた以上の愛着を感じて、手元にないことがさみしくて、不安で、あちらこちらをめくっては、ため息をついて、気もそぞろになってしまいます。そんなものだから、ふとした拍子に出てきたときの嬉しさといったら。特にそれが、思ってもみない場所から出てきたときには、嬉しさと一緒に笑いもこみ上げてきて、誰かに話したくなるものです。
今日の女将はまさに、そんな気持ちです。
今年のお正月は、次女の嫁ぎ先の実家に大晦日から集まり、にぎやかな一年の幕開けとなりました。これから始まる一年の大事な一日目だから、と元旦から着物を着て、みんなで、おせちをつついて、楽しく過ごし、いい気分で岐阜に帰ってきました。
ところが、先日、その時に締めた帯をしようと、いつもの場所を探しても見つかりません。どこか別の場所にしまってしまったかしら、と思い当たる場所を、片っ端からひっくり返しても、やはり見つかりません。とうとう次女の嫁ぎ先に電話してみますが、それでも、見つかりません。
こうなったら、”やかん”にお願いするしかない、と、やかんに紐をくくりつけたところ(松尾家では、昔からなくしものをすると、やかんの取っ手にひもを結んでおく)、ふと思い出しました。
1月1日の夕方、いい気分で岐阜に帰ってきて荷物を片付けるが早いか、父母のもとに行き、「本当に、娘をいい家にもらってもらった。あんなにあたたかいお家の家族にしてもらったなら、幸せなこと」と報告したのでした。
さっそく、父母の部屋に行き、あちこちめくってみると、出てきました。父の布団の中に、私の帯が隠れていました。どうりで見つからないはずです。
自分でもおかしな話です。失くしたことで、がっかりしていた気持ちが一気に、笑いに変わった瞬間でした。
でも、嬉しいことですね。帯のことなんか忘れてしまうぐらい、それぐらい温かい気持ちにさせてもらったのです。
今日はもうひとつ、温かいお話がありますので、ご紹介しましょう。
ここ最近はあたたかい日が増えて、春もすぐそばですが、スーパーなどの店先にもおいしそうな苺が毎日ならんでいます。
あるお客様が「苺は食べたいけど、体調がすぐれなくて、苺を食べるにはもったいないから」と言うのを聞いたその方の配偶者が、こう言われたそうです。
「何が一番もったいないかと言ったら、親からもらった体を大事にしないことだ。食べたいなら、食べたらいい」
”もったいない”という言葉には、ものを大事にする心が詰まっていますが、何が一番大事なことなのか、見失わないようにしていきたいものです。
おいしいと思ったり、感動したり、笑ったり、泣いたりできる体があるって、本当にありがたいことです。
配偶者の方がパートナーを大切に思う心も伝わってくる、そんなエピソードでもありました。
失くしたものに、それまで感じていた以上の愛着を感じて、手元にないことがさみしくて、不安で、あちらこちらをめくっては、ため息をついて、気もそぞろになってしまいます。そんなものだから、ふとした拍子に出てきたときの嬉しさといったら。特にそれが、思ってもみない場所から出てきたときには、嬉しさと一緒に笑いもこみ上げてきて、誰かに話したくなるものです。
今日の女将はまさに、そんな気持ちです。
今年のお正月は、次女の嫁ぎ先の実家に大晦日から集まり、にぎやかな一年の幕開けとなりました。これから始まる一年の大事な一日目だから、と元旦から着物を着て、みんなで、おせちをつついて、楽しく過ごし、いい気分で岐阜に帰ってきました。
ところが、先日、その時に締めた帯をしようと、いつもの場所を探しても見つかりません。どこか別の場所にしまってしまったかしら、と思い当たる場所を、片っ端からひっくり返しても、やはり見つかりません。とうとう次女の嫁ぎ先に電話してみますが、それでも、見つかりません。
こうなったら、”やかん”にお願いするしかない、と、やかんに紐をくくりつけたところ(松尾家では、昔からなくしものをすると、やかんの取っ手にひもを結んでおく)、ふと思い出しました。
1月1日の夕方、いい気分で岐阜に帰ってきて荷物を片付けるが早いか、父母のもとに行き、「本当に、娘をいい家にもらってもらった。あんなにあたたかいお家の家族にしてもらったなら、幸せなこと」と報告したのでした。
さっそく、父母の部屋に行き、あちこちめくってみると、出てきました。父の布団の中に、私の帯が隠れていました。どうりで見つからないはずです。
自分でもおかしな話です。失くしたことで、がっかりしていた気持ちが一気に、笑いに変わった瞬間でした。
でも、嬉しいことですね。帯のことなんか忘れてしまうぐらい、それぐらい温かい気持ちにさせてもらったのです。
今日はもうひとつ、温かいお話がありますので、ご紹介しましょう。
ここ最近はあたたかい日が増えて、春もすぐそばですが、スーパーなどの店先にもおいしそうな苺が毎日ならんでいます。
あるお客様が「苺は食べたいけど、体調がすぐれなくて、苺を食べるにはもったいないから」と言うのを聞いたその方の配偶者が、こう言われたそうです。
「何が一番もったいないかと言ったら、親からもらった体を大事にしないことだ。食べたいなら、食べたらいい」
”もったいない”という言葉には、ものを大事にする心が詰まっていますが、何が一番大事なことなのか、見失わないようにしていきたいものです。
おいしいと思ったり、感動したり、笑ったり、泣いたりできる体があるって、本当にありがたいことです。
配偶者の方がパートナーを大切に思う心も伝わってくる、そんなエピソードでもありました。