抜き型

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keian 2009-7-8 6:18
今日は料理のあしらいということで、抜き型のことを書きます。
下内屋さんには、抜き型が、<ものすんごく>売ってます。
その中で、お弁当のおかずのあしらいにちょうどいいのが、660円であります。
直径20mmで12個セット。ステンレス製。ケースはなつかしいブリキ製です。
ミニクッキーカッターといいますが、なかなかのすぐれものです。

実は、私は料理のあしらいが、料理屋のくせに苦手なんですが、それをこえても
食べてもらうために喜んでもらうことが大切と、まがりなりに店を6年やらせていただいて気がつきました。
昨日のお客様に、冷奴の上に、鮎の抜き型で、瓜の皮をうすく一枚透いてその下を形どってのせましたら、本当に喜んでくださったのです。青楓の葉も爽やかでよいのですが、
飾りでなく、食べられるということがサプライズだったようです。
和菓子やさんがお使いになる抜き型は、真鍮製です。
これは、本当に細かい細工もできるからで、ひとつ、ひとつが、職人さんの手作りです。
お茶席の干菓子に凝っていたときに、京都の堀九来堂さんまでよく注文にいったものです。
今になって思うと、出来上がりのよしあしもさることながら、各駅を乗り継いで出向く間に考えることが、好きだったのです。
数かぎりなく、京都まで行きましたが、私は、<ものすんごく>方向音痴なのです。
知らん人に道きくのは、平気なので、頭を下げからかして教えてもらいます。
<あんたは戌年やでみんなに可愛がってもらいなさい、きいてきいて生きていきなさい>と
いってくださったのは、南禅寺の菊水の板前新三さんの奥様です。ご出身は、丹後の宮津でした。抜き型ひとつを買いにいくのに、一日かけて、汽車賃かけてなにやってんだろうと、月末になると財布をみてはためいきをついたものですが、今になって思うと出会いは
一番のおみちびきです。人との出会いは素晴らしい。何年たっても、モノを使うたびに
思いだします。<モノには心がないから>といった人がいましたが、どうでしょう。
私は<きえもの>を仕事に選んだくせに、心が大好きです。
ひょっとすると、そういった人ほど、モノへの憧れがつよいのかな?

ひとつ葉

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keian 2009-7-7 7:37
私の苗字は松尾です。
同じ苗字だからというわけではありませんが、
松尾芭蕉翁の句にちなんだことを書きます。

あの奥の細道に旅立つ前に、松尾芭蕉翁が岐阜にきております。
梶川町にあります妙照寺<日蓮宗>に滞在しております。ここを翁寺<おきなでら>といわれる所以です。
元禄元年に僧籍にあった己百の東道で岐阜に入りました。
 夏来ても ただひとつ葉の 一葉哉
 おもしろうて やがて悲しき 鵜舟かな
の有名な句のまえに、夏の暑さよりも先に、葉一枚の涼しさを感じたのかもしれません。俳句は、感情よりも先に写実をいいます。一瞬の景を
永遠にする文学のように私は思います。急いだりあせったりしないのです。 
ここから、月日は百代の過客にして、行きかふ人もまた旅人なり と冒頭の文章にはいると憶測すれば、岐阜も捨てたものではありません。

この句碑は 岐阜県俳句作家協会によって、金華山頂上付近岐阜城へつうじる小径の脇にあるそうですし長良の法久寺にもあるそうです。
ひとつ葉は羊歯類で山野に自生しますが、ふつうの植物は夏になると枝葉が青々と茂るのにこのひとつ葉だけは、冬とかわらずたった一枚の葉であると自分の孤独を重ねたのです。
現在は、金華山の天然記念物に制定されており、勝手に採ってくることはできません。
ありがたいことに、とうふ屋桂庵の庭には、おかげさまでひとつ葉がございます。
かわらず、ここで商いをさせていただける賜物です。

また、私が生まれたころに、奈良屋さんが
<一つ葉>という銘菓を創生されております。
亡き河合ひでさんの創作菓子と昭和36年に嫁いでこられた女将さんにお聞きしました。
このお菓子は、ひとつ葉の焼印の上に、すり蜜のぐあいも素晴らしく、茶席にふさわしいのです。今日は菊最中も買ってきました。鵜飼のお茶碗でお薄をたてましょうか?

色心不二

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keian 2009-7-6 7:09
今日は若い人との縁を書く日です。
実名をあげていいということなので、豊証券の岡本君のことを書きます。
桂庵としての取引がないのに、私個人としてつきあってくださる酒屋さんがあります。
そこの紹介ということで、ご予約いただきました。
予約をされてから、どなたといこうかと思案をなさったくらいのピュアなかたです。

ところで、岐阜に天然ワインを作っていることをご存知ですか?
長良川のほとりで3代目が、林真澄さんとおっしゃいます。
1985年頃に買いにいきましたが、まるで、フランスの片田舎のシャトーみたいで
感激しました。突然に、幼子をひとりをおんで、ひとりのてをひいてきた私に吃驚されたと思いますが、先代は話をしてくださいました。
 「本町のとうふ屋さんといえば、ここらは田舎やで、葬式のときは、総出でつくるんやが、昔からおまはんとこに、丸揚げの注文をたのむんや、おまはんはそこのむすめさんかな?みんな、ようしっとるわ。」
岐阜は、田舎ですのでみんなつながってくるのですが、、、この「ようしっとるわ」で信頼が決まります。信用は、カネが絡んできますし、時がついてきます。人間としての魅力を感じたときはカネと時を飛び越えます。
家に帰ってきて、「なんで、天然ワインのところを知っとんの」と聞きました。こちらの先代の甚一が、株式に熱心でしたが、そのときの担当が、ここ志段見の林さんというかたで、積極的に頼んでくださったのです。そのころの担当は、転勤もなく、店頭で自分個人のお客さんを持つわけです。つまり、一代つきあうわけです。
田舎のことなので、全部が林さんかもしれません。
「いっぺん、仰山の葡萄をもってきてくれて、こうやってつくりゃあ」と教えてくださったそうです。できあがるまで待ちきれないくらいにいい香りだそうで、味見するといっては、ついつい飲んじゃったそうです。ワインを造る志はあっても段々に熟成を見る意志が必要と、志段見の地名かな?いや味見の誘惑にまけることで志段見の地名かな?

そんなことを考えながら、<しきしんふじ 色心不二>という言葉を思いだしました。
もとは、法華経における心と体の統一的真理を説く仏教用語ですが、株式の真理というか、
人間の心理をついていると思いませんか?
欲望はあってあたりまえ。それと折り合っていくのが理性。
クールな頭脳とホットな心であります。
とうふ屋桂庵のワインは、<色心不二>にさせていただいております。

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keian 2009-7-5 9:49
一茂くんとのトークの土曜日ですが、だんだん難解になってきました。
それだけ、ふたりとも真剣になってきたわけです。
季節があり、行事があり、そこに旬の素材があり、器はそのためのものと思っていましたが、流れの中で演出ということが、献立に必要じゃないかということになりました。

もともとは、彼の夏をあらわす器を作りたいという相談からです。
青竹でつくる。貝殻でつくる。と指折り数えていて思いだしたのが、田村隆氏の光る皿です。
フランス料理の食事会のなかで、オードブルの帆立の薄作りがサービスされるのと同時に輝いたそうです。料理を盛った皿が光る。作り手の心意気が、相当に伝わっていないとできないサービスですが、それ以上に喜ぶお客様の顔が思いうかべて、なんとかしたくてしかたがなかったそうです。
亡き田村平治氏の言葉に
人が丸く切ったら四角に切れ。人が三角にしたら丸でいけ。
とありますが、彼は、ヒントはそこらじゅうにあるんだと、ケーキのエンゼル型にかき氷をつめて、電球をセットするべくして大成功。余談ですが、彼が中学時代からやっている
鉄道模型の腕は、そうとうなものです。
私も、そのときのお客様の感動を思いうかべて、気がつきました。

目で見て、舌で味わって、、、、
あと、なにがあるかといったら、音。
夏の音は、涼しいこと。
風鈴の音。
料理の流れの中で、一番にお出しするものにかすかに涼しい音がしたら、、、
とうふ屋桂庵ですから、先付けには、とうふをつかったもの、とうふをイメージするものを必ずお出しすることにしています。できるだけ素朴にお出しします。豆腐というものは、何よりも庶民的なものでありたいからです。本当は、とうふのこだわりとか能書きはてれくさいのです。、だけど、演出ということにおいては考えなくてはいけません。私の店に予約をしてお客様はきてくださるのですから。

すぐに完成するわけではありませんが、一茂くんは窯元に相談に走っていきました。
ドアのしまるのも、音です。

Mr八坂のカレー

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keian 2009-7-4 8:12
男のカレー、女の黒豆という言葉があるそうですが、
ともに、たまにつくる料理の個人的なこだわりを言うそうです。

Mr八坂は、九州男児でしたが、たまの休日に部下を招いて、手作り
カレーをごちそうするやさしい方です。
奥様の<ごめいわくですよ>の言葉で、その楽しみを断念されたという
ナイーブなかたで、私は、ぜひともとお願いして桂庵で作っていただいたことがあります。
カレーもルウにこだわって。各社ブレンドされる方。
カレー粉から、ルウを作る方。
スパイスを20種類ほどで、カレー粉を作る方。
とこだわりもいろいろですが、彼は、肉のこだわりがよかったですね。
岐阜屋の開店を待って。100グラム1350円の牛肉を350グラム
買っておみえになられました。
出来上がったカレーは、濃厚で肉そのもののうまみを堪能できるものです。
もう、一度食べたいのですが、この6月26日に東京に帰られたようです。

私の子育て時代は、年子の女の子のヤマハ音楽教室の付き添い日の
お決まりメニューでした。
ただし、二度同じカレーは作らないと決めて、カレールウも各社全部を
ためしていましたし、朝岡香辛料のスパイスを買うのにも夢中でした。
おかげで、インドのモグライチキンカレーも、門司の日本郵船食堂の
カレーも作れるようになりました。具よりもルウにこだわったほうが
可能性はひろがるのかな?

そんななかで、お茶漬けカレーとさらっと仕上げたもの評判がよく、
これは、桂庵では、とうふをカレー味で食べてみたいというお客様の
ときにお出ししています。献立の前後の材料によっては、うどんやの
カレーのように、片栗粉のつなぎのものをお出しすることもあり、このときは、厚揚げです。
昨日は、PCクラブの先生から、、夏野菜をソテーしてカレーにトッピング
とお聞きして、Mr八坂のカレーを作ってみたくなりました。

なやむ

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keian 2009-7-2 6:19
私の店は、とうふを食べてもらうというつもりで
コースで、2000円のみということで創めました。
ありがたいことに、お客様がもっと美味しいものをといってくださって
とうとう、ご希望にあわせて1万円までさせていただきました。
店は生き物だからといってくださった料理店主がおみえでしたが、
本当にそうですね。お客様という水しだいで、どんどん成長していくのですから。
ただ、私は主婦でしたし、いまも主婦ですので、この感覚を
忘れたら、私の料理ではなくなってしまうと自戒をしています。

主婦もそうですが、私もなにをつくろうかと悩むのです。
旬のものも走りのものも魅力的です。
同じ魚でも、さしみ 焼き魚 煮魚 酢の物 揚げ物であじわいが
違ってくるでしょう。つきぢ田村の扇面にかいておられように
五味五法なわけです。
同じ家族であっても、ひとりひとりに好みがありますから、
ましてや、お客様は、好みがかけはなれておいでのこともあります。
そんななかで、私の店でのひとときを楽しんでいただくのですから
ご予約の際におたずねをすることにしています。

昨日のお客様は、煮豆の味付けなどのときには、
ご主人に<これでいい?>と一番に味をみていただくそうです。
もう、ひとりのお方は、<なににしよう>と調理を選択していただく
そうです。

夕暮れに、いきつけの八百屋さんや魚屋さんで買い物をして献立をきめたのは昭和の時代だったのですね。ここでの会話が料理の先生だった
わけです。成功しても失敗しても、翌日の会話がまた上達へのみちしるべ
になったんだと思います。

ドロッパー

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keian 2009-7-1 5:55
雨がしとしと。
これを、雫というか。露というか。
下内屋さんでこんなものをみつけました。
本来は、ぜりーなどを型に流す道具です。
ゼリーが固まる前に、均等に流すのは、一人で、お玉では20個までぐらいですから、たくさん作るプロ用の道具です。
これは、両手で扱いますが、片手で扱うのは、<御座候>のお兄ちゃんが使っているアレです。買っても買わなくても、見ていると楽しいですね。
 そんなわけでもないでしょうが、
この間は、本来の目的以外に売れたそうです。
知的障害がある子たちが、洗剤を作って販売をするための容器詰め作業のためだそうです。口元からこぼれたもので、転倒してはという配慮から選択されたそうですが、相手のことを思って相談にのるお店の姿勢です。
やる気を感じられたのだと思います。
商売に大切なことは,しゃべることではなく、耳を貸すことやと
マシンガントークの私には耳の痛い話です。
また、先端に工夫がしてあり、落としても変形しないそうですし、
レバーが取り替えられるので、簡単に洗うことができるそうです。
製菓道具は、フランス製が一番とのことでしたが、日本製はもっと
素晴らしいのです。なんでもそうですが、一番と思った時点で、もう下り坂だそうです。
ちょっといいものが、もっとよくなると教えてくれたのは、
今は、亡き天徳泉のおばあちゃんです。
私も、ちょっとばかり、一寸と書くそうですが、美しくありたいです。
 
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